2025年後半以降にリリースされたV-POPアルバムの視聴感想文
ベトナムは”フィジカル文化”が発達する前にYoutubeで音楽を聴くスタイルが広がったため、アーティスト側もアルバムを出すよりMVにお金をかけて"一曲入魂"するタイプでした。それがSpotifyなどのストリーミングサービスが普及するにつれ、アルバムを出すコストと敷居が下がり、ここ最近は追うのに必死なほどリリースが多い!
そんなV-POPの、去年後半からリリースされた中でも個人的お気に入りのアルバムをアーティスト紹介を交えながら感想を書きました。
- VSTRA「Triệu (Million) Phase 1 of 3」
- Wren Evans「NỔ (爆発)」
- Vinh Khuat「Chia 4 (4分割)」
- BRay「cho bảo」
- Low G 「L2K」
- Min 「Dear Min」
- Pháp Kiều 「KIÊU XA (luxury)」
- Juky San「Đẫm Tình (深く愛して)」
VSTRA「Triệu (Million) Phase 1 of 3」
期待大の実力派女性シンガー、ついに本領発揮
彼女については「Internet Love」(- YouTube)から若手とは思えないハスキーな声と表現力で注目していたものの、楽曲リリースは毎年シングル数曲や(元パートナーのObitoを含む)他のアーティストの客演などチマチマしており、「もっとアグレッシブに活動したらもっと売れるのに」と歯がゆい気持ちを抱いていた。そんな彼女のフルアルバムのリリースは、私の中では結構な吉報だった。
全体的に彼女の歌声を活かしたミドル~スローテンポな作品。特にアコースティックギターで始まる曲「Ai Ngoài Anh(あなた以外に誰がいる?)」は最高に彼女と相性が良く、本国Spotifyの週刊チャートでは国内アーティスト楽曲で1位を獲得、韓国Spotifyでも「Viral Songs」に挙げられている。IVEのイソちゃんはショート動画で別の曲「Hôn Vào Đây Đi(ここでキス)」をピックアップしていた。
間違いない 2026年はVSTRAの年になる
Wren Evans「NỔ (爆発)」
やはり彼の才能には抗えない
2020年のデビューから5年で年間最優秀アルバム受賞、「国内で最も聴かれた楽曲」選出、「ベトナムZ世代を代表するアーティスト」といえばまず彼の名前が挙がる"才能の塊"、にもかかわらず当の本人はいたって謙虚で、全方位から評価されている人物...のはずだった。
去年、恋人から「ダンサーと浮気している」とSNSで暴露されて好感度は一気に失墜。日本韓国並みに”有名人の品行方正さ”を重んじているベトナムでも、このスキャンダルは相当痛かった。
そんな彼が雲隠れ(自業自得だが)をし、1月初めに突然ニューアルバムをリリースしたことは驚きを持って受け入れられた。
個人的お気に入りは、2曲目の「Không Thử Sao Biết(試さずにどうやってわかる?)」。ニュージャックスイングの跳ねたリズムに、Evansのマイペースで優しい歌声が重なる。そのギャップが心地よい違和感になっていて面白かった。
前回アルバム「LOI CHOI」に比べて”Evansの歌声とサウンドがセッションしている”と思わせるようなより実験的な感じが強い。皮肉にも今の状況でウケを気にせずに「本当に自分が作りたい曲」に集中できたのかも。「前作から変わり映えしない」という声も聞こえるけど、この”実験的音楽”と”ヒット曲”を両立させる人物も、なかなかいないんよねぇ。
Vinh Khuat「Chia 4 (4分割)」
ポップミュージックで遊び、ポップミュージックで楽しませる男
V-POPの楽曲をあさっている時にたまたま見つけた「Quá Lâu (So Long)」(- YouTube) がノリが良く、以降時々「新曲出したかな」とチェックしていたアーティスト。
楽器を演奏する時「音楽が好きだぁ!」という表情を前面に押し出している真っすぐな感じや、口元が何となく「(お笑い芸人で画家の)ジミー大西に似ている」と思い、大阪人の私としては勝手に親近感を抱いていた。
アルバムは全体的に聴きやすい”明るいポップス”多めだが、シティポップなオープニングで始まる「Không Cần Gì Hơn(これ以上何も要らない)」や、祖国を称えるその名も「Việt Nam」、50's Rock調の「Valentine Lãng Mạn(バレンタインロマンチック)」などバラエティに富んでいてとにかく聴いていて楽しい。
ちなみに彼の経歴を調べたところ、音楽一家に育ったサラブレッドで、彼自身はドイツで音楽の高等教育を受けていたらしい。
「ジミーちゃんに似てる」とか言ってごめん(?)
BRay「cho bảo」
お騒がせラッパーの"特大のエモ"アルバム
2025年中、V-POPの中では一番聴いたアルバム。
某K-POPグル(誰でしょう)をディスる発言をしてベトアミさん(ほぼ答え)を激高させたり、「元カノなんて●ねばいいのに」という過激な歌詞の曲を出してお咎めを受けたりと、炎上まではいかずとも所どころで”ボヤ騒ぎ”を起こすラッパーだけど、エモ系楽曲を作らせるとベトナムラッパーでは右に出る者はいないんじゃないかと思う。
キャリア10年の集大成ということで力が入っていたようで、自身の人生や内面をえぐり出し作品に落とし込んだ渾身の1枚。
特にこのアルバムを象徴するような1曲が、最後から2番目の「Còn ai ngoài anh với em(君と僕以外に誰がいる?)」。”君”というのは恋人ではなく母親のことを指しており、母子家庭で育ったBRayの苦しかった幼少期や母親との絆について歌っている。
お気に入りはIntroから続く2曲目の「Vùng An Toàn(安全地帯)」。自身がコーチを務めるサバ番「Rap Viet」シーズン4に出場した女性ラッパーのV#を、シンガーとしてフィーチャリング。彼女の「Everything's gon' be okay...」と歌う甘い声が切ない。
あとキャッチーな「Ghệ Mới (新カノ)」も好き。こっちはひたすら「彼女ほしー!」ばっかり言ってる歌詞だけどw
当アルバム収録曲ではないけど、好きな曲なので共有します↓
(何故か日本ではApple Musicでは聴けない)
Low G 「L2K」
97 lineによるY2Kトリビュート
見た目はのび太のくせに(お前はジャイアンか)お洒落なHIPHOPソングをリリースし続ける人気ラッパー、Low G。ジョングクのダンス動画に楽曲が使われ浮かれまくってるbbno$とも共演経験がある。そんな彼による初のスタジオフルアルバム。
アルバムタイトルは2000年を表す「Y2K」のY(ear)を自身の名前”Low G”のLに変えたものらしい。そのタイトル通り、2000年代をリスクペクトしたサウンドになっており、「あー、あの頃は不思議がってこんなトンチキチキ音聴いてたなー」なんて思い出が蘇る。
収録曲の中では、ラッパーよりも歌手のイメージが強い(ただしどちらも上手い)パイセンのJustaTeeと共演した「In Love」がヒット中。これは世代選ばぬR&Bバラード曲なので納得。
ただ自分の中でモヤってるのが、前述のVSTRAに並ぶ好きボ(好きVoice)の52Hzが、楽曲の合間にラジオDJの役で客演しているものの、歌手としての役割はなかったこと。
折角なら歌わせてあげてよォ...
Min 「Dear Min」
成長した自分を表現したアルバム
V-POPに興味を持ち始めたころ、Twitter(現X)で「誰か~おススメのV-POPソングを教えてぇ~!」と募ったら見知らぬ方にMinの「Cà Phê」を教えてもらい、失礼ながらベトナムがクオリティ高いMVを作っていること、何より映像が可愛すぎて腰を抜かした。TikTokでも日本人リスナーが何人かこの曲とMVを紹介をしていたのを覚えている。
今回のアルバムはタイトルが「Dear Min」=自分自身へというだけあって、「自分への手紙」をテーマにして感情を吐き出すことに焦点を当てているそう。MV見ても確かに歌っている以上に”語っている”印象だった。収録曲は殆どがポップバラードで、彼女の歌声の良さもあり、特にアジア圏の人には全体的に聴きやすい一枚になっていると思う。
でも個人的には「Cà Phê」みたいな心弾むような曲をまた聴きたい...
Pháp Kiều 「KIÊU XA (luxury)」
このブログではおなじみベトナム初のLGBTQ+ラッパー、Pháp Kiều(ファップキウ)。
他の紹介アルバムのアーティストは数年のキャリアを経てフルアルバムをリリースしているのに、彼女はデビュー2年足らずで出してしまった。それだけ大人気サバ番「Anh trai "say hi"」でファイナルまで進んだだけの実力や人気の高さが伺える。
前半のガールクラッシュな曲から後半のスローなメロディの曲へと、曲が進むにつれてアルバムの”色”がグラデーションのごとく変わってるな、と思いきゃ
- 誇り高く力強く自信に満ちた「Slay」
- 愛について歌う「Chill」
- 恨みと苦味に満ちた憂鬱な「Dark」
という3部構成になっているらしく、表舞台では陽キャな彼女が歌手としては弱さも表現している。Pháp Kiềuにしか出せない世界観に、今後も期待。
Juky San「Đẫm Tình (深く愛して)」
"Em Xinh"シンガーの意欲作
大人気の”歌って踊れるオールラウンダー№1決定戦”サバ番「Em Xinh “Say Hi”」の出場者の中でも特にドーリー(お人形さん)なビジュアルだったJuky San。
デビュー当時の彼女は陽だまりの下で温かみのある歌を歌っているイメージだったが、「Em Xinh ~」の放送が迫ったあたりから少し影のある女性にイメチェン。初めて出したこのアルバムはダンスナンバーが中心で、プロデューサー陣も2pillzやPixel Nekoなど今ホットな売れっ子を招聘しかなり気合が入っている。
様々な”愛の表現”を詰め込んだ楽曲の中で、お勧めはフィーチャリングに同サバ番で競演したラッパーのLiu Graceを迎えた「Ta Cùng Nhau Quên Niềm Đau(共に痛みを忘れよう)」。歌詞は恋人ではないであろう相手と恋愛の傷を癒し合う、という内容で、MVでJuky Sanはヴァンパイアハンターに扮しており、楽曲MV共にセクシーな世界観。
初期のJuky San↓
最近のJuky San↓
以上です。
昨年(2025年)はプライベートでいろいろあり、今も不安が解消されたわけではありませんが
そんな中でV-POPに限らずいい曲にふと出会える瞬間が本当に救いだなぁ、と
Sai lầm nhất là khi mà ta đã nghĩ rằng ngày mai là hôm nay
Nhưng mà anh đã chọn âm nhạc, so I guess I'm okay明日が今日だと考えるのが最大の間違い
でも音楽を選んだから、大丈夫だと思う
B ray「Vùng An Toàn(安全地帯)」より
では、また。hẹn gặp lại.
