「BTSとARMY」を読みました

 アイドルやアーティストについて書かれた本というのは世の中に沢山あれど、ファンダム、しかもたった一つのファンダム中心に書かれた本というのは稀です。今回はそんな画期的な本「BTSとARMY」について読んだので、そのことについて書きます。

目次

そもそも私はARMYなのか

ARMYがつなげる”2つのネットワーク”

BTSとARMYの険しかった道程

それでもARMYが増えた理由

ARMYへの思い

そもそも私はARMYなのか

 TwitterではARMYさんでフォローさせてもらっている方が多く、「グッズ持ってなくたってバンタン好きなら皆ARMY!」と言ってくださっている方もいて非常にありがたいのですが、BTSは好きなものの、正直私はARMYという自覚はありません。

 タルバンほとんど見たことないし、距離は少しおくけど、何かあったら(ハッシュタグ運動とか)助けに出る、ドラマ「水戸黄門」でいうと、ARMYは助格なら私は風車の弥七くらいのスタンスを取っているつもりです。

ARMYがつなげる”2つのネットワーク”

 私がARMYに注目するようになったのは、”2つのネットワーク” - リアルとバーチャルのネットワークとARMYの方々の”脳内”のネットワーク - が見えたことにありました。

 きっかけはSUGAことイ・ユンギがリリースした「大吹打」。

youtu.be


 こちらのMVが公開されるや、Twitter上に「これは朝鮮王朝の王だった〇〇がモデル」「そういえばこの歌詞について、インタビューでこんなこと言ってた」などのARMY達のつぶやきが大量に上がっていました。
 皆さん頭を張り巡らせ、膨大な量のコメントの記憶や蓄積した知識をつなぎ合わせて自分なりの答えを導く。その頭の中にあったネットワークを、またSNSというバーチャルなネットワークを通してファンと共有し合う。
 「BTSを読む」でも文芸評論家の方が「BTSの作品群は”ユニバース”ですね」と言われていましたが、このネットワークももう一つの”ユニバース”になっている。
 なので実際はuni=単一のverseではなく、BTSの世界では、BTSuniverseとARMYの別々のuniverseがある。それが合わさって、We(=私たちの)verseという言葉が生まれたのかもしれない。(知らんけど)

BTSとARMYの険しかった道程

 「BTSとARMY」は、BTSのファンダムがどれだけパワーがあるか、ということを語っているだけではありません。本の前半は彼らの"ブレイク前夜"の話や当時のARMYの草の根活動にも触れています。そう、BTSがこれまでと違うグループである分、彼らとARMYの歴史は、以下の様な固定概念を打ち破る"闘いの歴史"でもありました。

アメリカでアジアのポップソングやアイドルは売れない
・歌は誰かに作ってもらうもの
・歌唱力は低い、その分見た目でカバー
・ラブソング多め
・社会に対する歌は歌わない

 しかもこれらは、昔から世界で通説となっているボーカル/アイドルグループに関するもののみ。これだけではなく、BTSそしてARMYは母国の韓国で根強い固定概念と闘う必要があった。それは

・中小の事務所所属のアイドルが、大手事務所所属アイドルに人気が勝ることは(ありえ)無い

ということ。

 韓国の芸能事務所ビッグ3(SM, YG, JYP)どころかほぼ無名の事務所所属の新人アイドルグループのBTSが、デビュー直後からアメリカのK-CONでどの他グループよりも歓声を浴びたことを、メジャーグループのファンたちは納得しなかった。

 加えて、ARMYは「BTS以外のK-POPアイドルには興味ないの」という人が多い。そのため
K-POPファンはマルチファンダム(=複数お気に入りのファンがいる)
という海外のK-POPファンには鼻についたようで、そういった他ファンダムの攻撃にも対処しなければならなかった。

  この闘いに耐えられず、活動初期の段階でファンダムを離れていった人も少なくないとのことです。

それでもARMYが増えた理由

 しかしARMYが減るどころか増える一方だったのは、やはりBTSの土台がしっかりしていたからでしょう。これは「BTSを読む」でもわかりましたが、本書の中盤ではさらに、BTSの言動、同性や知識層にまでファンダムを拡大した理由が線となって浮き出てきます。私は前回の記事で「BTSがこれだけ世界的に有名になったのは時代に選ばれたから」と書きましたが、ここで重要な前提を見落としていることに気づきました。

 方言を用いて自分についてラップで語り、LGBTQを理解するコメントを発し、アフリカ系ラッパーからのメッセージを真摯に受け止め、批判にも反応し、心理学の言葉などを曲のタイトルとして使用し楽曲の世界観を作る。そもそも時代に選ばれたのも、メンバー自らこの世界や時代と向き合っているからだ、と。(前回記事で公開した図のカテゴリを含めた)ファンが多種多様になり、それが(いろいろあれど)一枚岩になっていったのも頷けます。

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ARMYへの思い

 BTSは2020年にBLM(Black Lives Matter)の活動に1億円の寄付をしたニュースを読み、最初は「BTSはブラックミュージックから大きく影響受けているから」だけだと思っていましたが、メンバーもARMYも「私たちもマイノリティからスタートして世界を変えた」というシンパシーを感じたのも要因ではないかと思いました。ARMYは今後も拡大していくのは必至でしょう。その分外部からの攻撃も受けやすくなる。ファン同士の衝突も増える可能性もある。その時はこれらのことを思い出してまたエネルギーを良い方向に向けてほしい。

 私も必要であれば弥七として援護射撃で風車投げます。
 もしくはお銀さんとして入浴シーン見せます(絶対にいらない)。